2020/04/07
最少の時間で最大の練習効果を約束してくれる、効果的な「練習の順序」
誰もが最少の練習時間で上達したいと願います。
ところが、すぐに上達するひと、どんどん上達するひとがいる反面、練習しても練習してもなかなか上達しないことに嘆くひとも少なくありません。
いわゆる“音楽の天才少年・少女”には、共通したある特徴があることをご存じでしょうか。
それは、楽器の違いを問わず、あらゆる音楽演奏習得に通じる原理・原則のひとつなのです。
それは、耳から“真似ぶ”ということです。
“真似ぶ”とは、真似をすること。
真実に似る、と書いて真似るというように、いい音楽を聴き、それを真似ることが音楽演奏の王道といっても過言ではありません。
“音楽の天才少年・少女”が誰にも教わらずに、もしくは幸運にも優れた指導者に出会い教わった最も効率の良い音楽演奏習得の方法を真似すれば、天才でなくても天才と同じような過程を辿ってすぐれた演奏者になれるのです。
むしろ、天才ではないと自覚しているぶん、天才の何倍も練習、努力を重ねた結果、天才を凌ぐ演奏者になるひとも現れるに違いありません。
実際、有名な演奏家の多くも、ご自身のことを天才ではないとおっしゃる方がほとんどです。
だから誰よりも努力したとみなさんおっしゃるのです。
しかし、ただ長い時間練習すればいいわけではありません。
では、どんな練習方法を選ぶことで最大の効果が得られるのでしょうか。
それがいい演奏を聴き、それを真似するという方法なのです。
そして、この真似するということにも、その最良のステップがあります。
それを順を追って解説していきます。
ぜひ参考にされて、あなただけの上達の王道を見つけてください。
目次
1.ロングトーンでも、スケールで、エチュードも共通する練習ステップ
オーボエはあのギネスブックでも世界一演奏が難しい楽器といわれています。
そんなオーボエをいきなり吹こうとしても、ただ音を出すことさえ難しいのです。
ましてや、いい音色をと思っても、その前にただ音程を整えるだけでもすぐにできることではありません。
それなのに吹くことが練習だと、やみくもに吹き始めるひとがほとんどでしょう。
実際、レッスンを受けても、「さあ、吹いて」といわれるのでやはり吹くことばかりに頭がいってしまうのは仕方のないことです。
しかし、これがいちばん非効率な練習方法なのです。
それではどんなステップを踏んで練習していけばいいのでしょうか。
実は、ロングトーンでも、スケールでも、エチュードでも共通するステップがあります。
それを順を追って解説していきましょう。
1-1模範演奏を聴く
基本的に、頭のなかで自分が吹きたい音が鳴っていることが大切です。
自分の吹きたい音が鳴っているとは、目指すべき音のイメージが頭のなかに明確にあるということです。
当然のことながら、最初からそんなイメージを持っているひとは存在しません。
逆に天才といわれているひとは、吹き始める前にそのイメージが明確です。
だからこそ、天才を真似して、まず頭のなかに吹きたいイメージを叩き込むことが大切になるのです。
結論として、まず自分が目指す音を聴くことです。
ロングトーンにしても、スケールにしても、エチュードにしても、すぐれた演奏をまず聴くことからはじめてください。
最初は、聴く耳自体が育っていないので、ただ聴くだけになってしまうかもしれません。
それでも繰り返し繰り返し聴きつづけることで、だんだんと聴く耳が育ってきます。
最初は気づかなかったタンギングやスラー、クレッシェンド・デクレッシェンドなどのアーティキュレーションも次第に聴き取れるようになっていくでしょう。
模範演奏とは、自分が目指すべき演奏の到達点、目的地です。
目的地が定まっていないのに、ただ練習してもいったいどこへ向かっていくのか自分でもわかりません。
そんな成り行き練習ではなく、目指すべきゴール、中間地点をはっきりと定めることが欠かせないてのです。
そして、そのためにまずやるべきことは、模範演奏を聴くことなのです。
1-2.自分で歌ってみる
歌えないものは吹けないとはよくいわれることです。
何度も模範演奏を聴いて、頭のなかで明確な音色として奏でられたら、こんどはそれを歌ってみるのです。
楽譜を見ながら、なんどもなんども歌ってみます。
オーボエという音を出すことも、音程を整えることも、音色をよくすることも、正確な指使いをすることも難しい楽器ですぐにいい演奏ができるわけはありません。
せっかくたくさん聴いていいイメージが頭のなかに流れていても、そのイメージと自分の演奏とのギャップが大き過ぎて、せっかくのイメージが壊れてしまいがちなのです。
そこで、模範演奏を聴いたら、こんどそれを歌ってみていただきたいのです。
声なら比較的自分の思いどおりになりやすいので、模範演奏を音楽的に再現しやすいといえるのです。
何度も何度も歌うことで暗譜、すなわち楽譜を見なくても歌えるようになっていけば理想的です。
それくらい、何度も何度も繰り返して歌っていただきたいのです。
しかも、ただ数多く歌うだけではなく、より感情を込めて、一音一音、その音が奏でるイメージやその楽譜に注がれた音楽性を表現することを目指してください。
歌うのがどうしても苦手というひとは、頭のなかで口ずさんでもいいのです。
実際に声を出さず頭のなかで歌うだけなら、自分の声や音程の狭さも気にならないでしょう。
大切なことは、自分が能動的に音楽を奏でるというステップを自分自身のイメージのなかに刷り込んでいくということなのです。
1-3歌いながら指を動かす
次に行うのが運指の練習です。
いくらイメージができていても、指使いがおぼつかなければいい演奏などできません。
しかし、口で吹きながら指使いを練習しようとすると、息の入れ方やその強弱、ブレス等気にしなければならない注意ポイントが多すぎて、指使いに集中することができません。
そこで歌いながら、もしくは模範演奏を聴きながら、指だけ動かしてみるのです。
すると指使いが難しい箇所も明確になってきます。
間違えやすいところは、なんども繰り返して指使いだけを取り出して練習してください。
そのとき、テンポをゆっくりと。自分ができる速さまで、テンポを下げて練習することも大切なことのひとつです。
間違った運指を繰り返すと、それが染みついてしまいます。
だから、自分で間違わずに指を動かせるテンポまで下げて練習するのです。
そこからメトロノームのひとメモリずつテンポを上げていきますが、絶対にあわてないでください。
自分ができるテンポで練習していると、もう少しテンポを上げても大丈夫だと思えるようになります。
そうしたらテンポを上げればいいのです。
この自分ができるテンポで練習するということは、次の段階でオーボエを実際に吹くときにもやっていただきたい最も大切な練習方法の原理・原則のひとつです。
1-4自分が吹けるテンポで吹く
ここまで積み上げて、ようやく実際にオーボエを吹く練習をはじめてください。
レッスンを受けるときにも、ここまでを予習しておくことがとても大切です。
いよいよ吹き始めますが、ここでも大切なことがあります。
それは、楽譜に書かれたテンポで最初から練習するのは避けるということです。
まずは、自分が吹ける速さまでテンポを下げて練習してください。
失敗したらすぐにテンポを下げて、10回吹いたら10回連続して失敗なく吹けるテンポで練習したいものです。
そして、10回連続して失敗なく吹けるようになったら、メトロノームのひとメモリずつテンポを上げていきます。
ここでも、あわてず自分ができるテンポで練習してください。
間違いながら練習すると「下手がため」といって、悪い癖が染みついてしまったりします。
正確な運指をかなえられるテンポで吹いてこそ、さまざまなアーティキュレーションを表現できるのです。
1-5求められるテンポで吹く
こうしてステップを踏んで練習してきたあなたにとっては、楽譜に書かれたテンポで吹くこともそんなに難しいことではなくなっているに違いありません。
あなたから見ればすぐに上達すると羨ましくなる“天才”たちは、実はここまでのステップを先にやっているだけなのです。
タンギングやスタッカートをともなったリズム練習も同じようにテンポを遅くして、自分ができるテンポで練習を繰り返したあと、楽譜に記載されたテンポ、先生が求めるテンポで吹いてみましょう。
最初からただ吹いて練習するのではなく、こうしてステップを踏んで練習を重ねることで、急がば回れという言葉どおり、むしろトータルではより短い時間で自分がやりたい演奏ができるようになるでしょう。
まとめ
自分の頭のなかに理想の演奏をイメージでき、それが歌えるようになれば、あとはその歌をオーボエに置き換えていけばいいだけです。
ステップを踏むことで着実に実力は高まっていきます。
練習したぶんだけ確実に演奏力は上がっていきます。
ぜひ、このステップで焦らず着実に練習を重ねていただきたいものです。